WEC(世界耐久選手権)から草の根レベルのレースに至るまで、レイズではあらゆるカテゴリーに対応するホイールを用意しています。サーキットという極限の技術力を競う場は、ロードホイールの進化にとっても欠かすことはできません。さらにエクストリームゲーム(ドリフトなど)にも積極的に参加し、世界各国に張り巡らせたアンテナで得た方法やノウハウは、すぐさまロードホイールの開発にフィードバックされているのです。
■ 新風を招く風穴を穿(うが)つ“TE037 DURA”
レイズホイールの新たなフラッグシップモデル“TE037 DURA”をご紹介しましょう。最大の特徴は素材に超超ジュラルミンと呼ばれるA7075を採用したことと、スポークサイドに穿かれた軽量化ホール。
レーシングホイールに比肩するパフォーマンスに相応しい、卓越したディテールをまずはご覧ください。
アルミ合金の王者“A7075”
超ジュラルミンA7075は1983年に住友金属工業が開発したアルミ合金で、アルミニウムに微量の亜鉛・マグネシウム・銅を加えて加工硬化(応力を加えて硬化)させることにより、引張強度と耐圧力性を飛躍的に引き上げた日本生まれの金属です。
通常のレイズ鍛造ホイールに使用されるA6061アルミ合金であっても、引張強度は320 N/㎟(1平方ミリメートルあたりの圧力で32.6kgの力がかかる)ありますが、A7075では560~580 N/㎟と炭素鋼(570N/㎟*以上)に勝るとも劣らない強度を誇ります。まさにアルミ合金の王者ですね。ところがこの王者、その頑強さゆえに加工が難しい・もろい・錆びやすい・劣化しやすいという扱いづらい性格、ことにアルミホイールとするには大きな問題を抱えていたのです。(*:S45c炭素鋼数値)
真の王者を目指して(基礎編)
アルミ合金の王者ともいえる超超ジュラルミンA7075は、かの有名なゼロ戦にも使われた軽量かつ高強度な材料。この革新的な素材は、その後も世界中で研究が進み進化を遂げたのですが、基本的に高価なうえに頑丈(硬)すぎて加工もしづらかっため、広く普及するまでには至りませんでした。しかしレイズでは「この王者をなんとかできないか?」と考え、金属メーカーの協力のもと2010年頃から本格的な開発に着手A7075最大の難点であった応力腐蝕割れ(錆びからくる経年損傷の一種)を可能な限り排除した新A7075“レイズ・ハイピュア材”の開発に漕ぎ着けました。
レイズ・ハイピュア材では合金配合率を徹底的に見直すことで、本来の頑強さはそのままに、実績あるA6061に近い信頼性を獲得することに成功。ここにきてアルミ合金の王者は、レイズが誇るフォージド・テクノロジーを受け入れられる変貌を遂げたのです。
真の王者を目指して(実践編)
TE037 DURAはレイズ独自のデザイン成型金型鍛造工法で製造されます。本来A7075は硬くて頑丈なぶん伸びにくく、金型を使用する圧延成形には向いていないのですが、金型を使わないで削って形にするマシニング成形との強度比較で+20%というメリットをレイズは選択しました。
デザイン成型金型鍛造工法は、ホイール形状に沿った途切れのない上質な鍛流線の形成と、それに伴う強度の向上が最大の特徴であり、薄くても頑丈というA7075の特製を最大限に引き出すことが可能となります。その端的な例が軽さ。薄肉化とウエイトレスホールをはじめとした工夫の数々で軽量化を極めたTE037 DURAの重量は20×10Jで9.5kgと、同サイズのレイズホイールに比べて1kgほど軽く仕上がっています。
最高・最強の1本
強度・超軽量のレイズ製6本スポークとくれば高剛性は約束されたも同然。最新の“キャンバー剛性理論”が導入され、レイズの持てる力のすべてが注ぎ込まれたTE037 DURAは、数あるアルミホイールの中でも最高・最強の1本になったと自負しています。
また超超ジュラルミンホイールの開発を通して、従来のアルミホイールに対しても新たな可能性や挑戦課題などが発見できたのは大きな収穫でした。最初のアルミホイール誕生から90年余り、これからもホイールは進化を続けることでしょう。
レイズは常にその中心にいます。

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■ 高性能の最先端・キャンバー剛性解析とは
高まり続けるエンジンパワーとタイヤ性能は、ホイールに大きなストレスを与えます。そこでレイズが次に目を向けたのが剛性、つまり軽さと同時にたわみやゆがみを低減させる強度の実現です。レースホイール開発で磨いてきた解析技術を注ぎ、軽くて強靭なホイールを作る。いまや剛性解析はすべてのレイズホイールに用いられ、高い安全性という土台のうえに軽さと強靭さを積み重ねた、時代の最先端をゆくホイールを提供しています。
剛性解析の最新理論・キャンバー剛性とは
ハイパフォーマンスカーの進化は止まることなく、いまやレーシングマシンが公道を走る時代です。結果として一部のホイールには、レースホイールの理論をそのまま注いだ設計が必要となりました。なかでも注目したのは、コーナーリング時の形状変化を少なくしてタイヤの接地面積を一定に保つための“キャンバー剛性”です。コーナーリング時に発生するホイールへの入力は凄まじく、ホイールは否応なく変形させられます。その対策として最新の3D解析により変形しにくい設計を施すことは、いまやレースの世界では「勝つため」の絶対条件であり、確実にタイムアップに繋がる理論なのです。
レースホイールの世界ではインナーリムとアウターリムそれぞれの変位量が決められ、あらゆる環境でできるだけ変位量の少ないホイールが求められています。変形しにくいホイールは路面とタイヤの接地面を一定に保つことに繋がり、ラップタイム向上と同時にクルマの姿勢を安定させることを意味します。またクルマの姿勢が安定するということは、良好な乗り心地に繋がります。つまり、今後はキャンバー剛性がロードホイールにも不可欠な要素となるのは間違いありません。
積み重ねが“モノを言う”剛性解析技術
キャンバー剛性の下地となる考え方は以前から存在しました。以前はプロのドライバーの感覚に頼っていましたが、それがコンピューター解析により数値化されるようになり、アナログとデジタルふたつの視点から剛性値を高めてきたのです。そして、さらに技術革新が進み“シミュレーション解析”が可能になりました。過去のデータをもとに未来予測をおこなう新たな技術の導入により、ホイール開発のスピードは一段と加速されました。さらにレースホイールとロードホイールの垣根がさらに低くなり、最新技術導入のタイムラグが小さくなったのも大きなメリットです。
そしてロードへ
キャンバー剛性は注目すべき要素です。だからといって重いホイールでは意味がありません。レイズではいち早くシミュレーション解析をロードホイールにも導入し、“安全で、軽く、強靭”なホイールを生み出すレイズ独自のデザイン金型鍛造工法と組み合わせることで、ロードホイールの性能をさらに引き上げました。その理論を反映した最新作がボルクレーシングTE37 SAGA。レースマシン級のパワーと走りにも対応できるキャンバー剛性を搭載した、いま望み得るロードホイールの最高峰と自負しています。もはや最先端の技術はレースホイールだけのものではないのです。
■ RAYS WHEELの歴史は軽量化の歴史
ホイールが軽くなるとクルマの動きは大きく変化します。最新の研究ではコーナーリングスピード向上や操舵角度の減少など、操縦安定性に明確な差が出ることも判ってきました。レイズではそうした研究をはじめる遥か前から、世界に先駆けて軽量ホイールを開発し、多くのユーザーに提供してきました。なかでも約20年前に発売したボルクレーシングTE37は、スペックを更新しながら現在も世界中で愛される軽量ホイールの代名詞です。
軽量ホイールの可能性の拡がり
キッカケはエコカーの登場でした。車体の軽量化やハイブリッド機構など、様々な手段で燃費向上を狙うエコカーのためにホイールができることは何か。2011年、業界では異例の産学共同プロジェクトを立ち上げ、大阪工業大学と共に軽量ホイールがもたらす加速性能と燃費向上の試験をおこないました。その後、三重大学にて風洞実験をおこないホイールが空力に及ぼす影響を研究してきました。実験は実を結び、市販ホイールはもちろんWEC(世界耐久選手権)で使用されるレースホイールにも新たな理論が役立てられています。
■ 軽量&高剛性の真実を探る操安実験(現在進行形)
軽量ホイールがクルマの運動性能向上に役立つのは間違いない事実です。ではどういった理屈でどのような影響を及ぼすのかは、以前はプロのドライバーを中心とする人からのフィードバック、その後はコンピューター解析も加わり精度を高めてきました。そして現在、レイズではもう一歩踏み込み、外部組織と連携した操安実証実験を開始しています。さらに海外の自動車メーカーと検証実験をおこない、軽量な鍛造ホイールがクルマに与える操縦安定性への理解をさらに深めているのです。
実験結果は想像以上!
データ解析の結果、軽量&高剛性なレイズ製鍛造ホイールは、一般的な鋳造ホイールと比較して操縦安定性を向上させる効果を持つことが実証されました。
直線路
軽量ホイールに交換することでダンパーへの負荷が減少し、結果としてダンパーがストロークする動きが滑らかになります。さらに車体に伝わる衝撃も低下することで不快な突き上げ感が軽減されるのです。また、路面の凹凸を乗り越えた際もタイヤの振動が素早く収縮することは良好な乗り心地に繋がります。
コーナー進入からコーナーリング中
軽量高剛性な鍛造ホイールはダンパーがスムーズに稼働することにより、コーナーリングスピードが低速域から中高速域までまんべんなく上昇していることがグラフからも分かります。そのうえダイレクトなステアリングフィールになることから、ステアリング操作も滑らかになっており、中速コーナーリング時には操作角度が約10度も減少する結果が得られました。
コーナー立ち上がり
スムーズなダンパーの動きは中速コーナーの出口でも効果を発揮し、アクセルペダルの踏み込み量が約10%ほど多くなり、その分だけコーナーの脱出スピードが増しました。また、車体に伝わる衝撃も減ることで、コーナーリング中の突き上げ感が減少し、安定性だけでなく乗り心地が大きく改善されています。
結果
軽量な鍛造ホイールに交換することで、コーナーリングスピード向上と同時にステアリング操作がスムーズになり、コーナー脱出スピードも向上するなど“走りに効く”のは間違いありません。さらに突き上げGが減少することで乗り心地や安定性の向上するなど、フィーリングへの影響も想像以上でした。
結論
では、単純に軽いホイールが優れているのでしょうか。たとえば、仮に同じ重量であれば鍛造ホイールと鋳造ホイールに差はないのでしょうか。こうした疑問にもレイズは正面から向き合い、ひとつひとつを解決しています。
すでに工法による違いはその素材(耐力・靭性・硬度等、総合的な特性において鍛造用素材が鋳造のそれを上回る)をはじめとして、面密度剛性の差により同重量であれば鍛造ホイールが有利であることも証明されてきました。今後はさらに様々なケースでの実証実験をおこない、軽量&高剛性なホイールが操安性へもたらす影響への理解を深めていきます。